« プレシーズンマッチ2010 大分 1-2 アビスパ、いろんなコメント(20100703) | トップページ | 草津 2-1 アビスパ、20100717、いろんなコメント »

2010年7月16日 (金)

西村主審「決勝担当は日本サッカーの努力の結果」 2010年南アフリカ・W杯 審判員報告会:20100716

日本サッカー協会(JFA)は16日、2010年ワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会で審判員を務めた西村雄一主審、相樂亨副審の報告会を行った。また、イングランドサッカー協会との間で実施される審判交流プログラムの一環として、日本、イングランドから派遣される審判員(日本から東城穣氏、佐藤隆治氏、イングランドからスチュアート・アトウェル氏、アントニー・テイラー氏)も併せて発表された。
 以下は、西村主審、相樂副審の会見におけるコメント。
■西村「日本サッカーにかかわるすべての人たちの努力の結果」

西村 まず初めに、西村チームを代表しまして、皆様に申し上げたいことがあります。本当に多くの方々、JFA、Jリーグ、そして審判員の仲間たち、メディアの方々も含めて、それから本当に多くの日本の方々から、大会期間中に本当に大きな励ましをいただきました。心より感謝を申し上げます。この励ましに支えられて、大会期間中、何とか無事に乗り越えたというのが、わたしたちのチームの感謝というところです。あらためて、本当にありがとうございました。

 自分のことで振り返ると、まず、わたしたちのチームでいつも変わらない目標としているものがあります。それは、選手のために全力を出し切ること、そして選手のために誠心誠意尽くすこと。この2つがわれわれのチームの目標であり、それに向かって1つ1つ集中してやっていくということでした。(第4審判を含めて)合計7試合になりますが、その目標はわれわれの中では達成できたかなと思っています。ただ、試合を見返してみると、「もっとこうできたな」とか、「もう少し修正できていればよかったな」というのが多々ありまして、それからW杯の期間中に過ごした素晴らしいレフェリーたちのレフェリングにも感化されまして、まだまだやることはたくさんあるなと。まだまだもっと頑張らなければいけないなという決意を新たにして帰ってきたのが今の心境です。この後、もっと具体的にやっていきたいことは、Jリーグで表現していきたいなと思っています。

 それから決勝の割り当てを言い渡された時には、本当に光栄だなと思いましたし、今回のイングランドとの交流プログラムも知っていましたので、アトウェルさんとテイラーさんが一番喜ぶセットになったんではないかなというのが、割り当てを聞いた一番最初の感想です。ただ、割り当てに関してはもっと大事なことを感じました。それは日本サッカーにかかわるすべての人たちが、さまざまな形で努力をされてきた結果、FIFA(国際サッカー連盟)がわれわれに与えてくれた機会だなと、それを強く感じました。
 ですので、われわれはその与えられた機会をしっかり頑張ろうと気持ちを新たにして、ハワード・ウェブ主審の目となり、彼の一番やりやすい形での第4の審判をしっかり務めようとやってきました。実際、今日メダルを皆さんに共有していただきたく、持ってきています。後ほど、メダルを触っていただいても構いませんし、このメダルは日本のメダルだと思っていますので、ぜひ見てもらえればと思います。

 それから最後に、この大会で審判員が非常にクローズアップされたと思っています。日本でどのくらいクローズアップされたかは、われわれは分かりません。ただ、審判員が日本のサッカーの発展のために頑張っているんだということを誇りに思って、そして日本サッカーの未来に貢献しているんだということを、もっと強く感じながら努力をより重ねていかなければいけないなと思いました。
■相樂「ドゥンガ監督は日本語で『間違っている』と文句」

相樂 行く前はどのくらい自分が緊張したり、どのくらい感情が高ぶるのかな、どういうふうな自分になるのか楽しみなところがあったんですが、行って実際にやってみると、特別な緊張もなく、いつもやっている試合のように入れたというのは間違いないです。ただ、やっぱり普段と違う感覚というのは、試合が始まってから選手から伝わってくる気迫とかがものすごいので、自分の気持ちもしっかりしていないと押し込まれてしまいます。また、ベンチを後ろに背負っているので、監督さんとか後ろからくる気迫もすごいので、本当にしっかり自分を持っていないと押しつぶされてしまいそうになる感覚もありました。これは今までになかった感覚だったので、いい経験ができたかなと思っています。

 決勝戦も名前が呼ばれたときはビックリしましたけど、日本人として決勝に立てたことの喜びと、ステージに上がってメダルをかけてもらったときに、どの試合も変わらない、われわれは全部決勝だと思っているんですけども、ここ(決勝)で実際にやってみたい気持ちになったのも事実です。いつもやっていることができた、大きな問題もなく帰ってこれたというのは良かったと思いますし、いつもJリーグの方で研修を積んだりした経験が生きたかなと思うので、今後も国内でしっかりやることが重要かなと思っています。

――オランダ対ブラジルの試合ですが、前半はブラジルが完ぺきでしたが、なぜ後半に入って崩れてしまったのか。選手はみんな文句を言っていたようだが

西村 前半と後半でブラジルの戦いぶりが変わったというのは、わたしもピッチ上で感じていました。その戦いぶりが変わったというのは、わたしたちレフェリー側からすると、事前にレフェリングのゲームプランを立てていて、もしブラジルがリードしていたらこうコントロールしよう、もしオランダがリードしていたらこういうことが起きるだろう、そういう心理的な準備をしていました。
 ですので、(フェリペ・メロの)退場のシーンは、たまたま見えたのではなく、あの場面ではオランダが逆転していたので、その後のブラジルのプレーでは何か荒いことが起きるのではないかな、という心理的な準備をしてやったので、その中でしっかり見えた、それで判断できたという形になっています。ただ、戦術面でどうして変わったのか、もしくはオランダがすごく良くなったのかは、両監督に聞いてください。僕も聞いてみたいなと思います。

 それからもう1つ、たくさん文句を言われていたということで言えば、みなさんご存知のように、ブラジルの監督さん(ドゥンガ)は昔Jリーグでプレーしていた方ですので、おそらく監督さんの中での、日本人レフェリーに対する先入観というものもあったと思います。わたしとしては、いろんな文句も当然あると思ってやってますから、特にブラジルの文句とか、オランダの文句とかではなく、その場面で本当に選手が何の文句を言いたいのかをちゃんととらえることで、次のゲームコントロールにつなげられるように、という形でやっていました。選手が何かを言いたいときは、おそらく何か自分の判断と選手の間に若干の差があるんだなと考えていますので、何か選手から言われたときは、何かが違うのかもしれない、それをどうコントロールするか、マネジメントするか、そういう形でもってやっていました。

相樂 ちなみに、ドゥンガ監督は日本語で文句を言ってました。わたしに分かるように、「あなたは間違っている」「いつもあなたは間違っている」とわたしにずっと言ってきました(笑)。よく覚えているなと思って感心しました。逆に腹が立たなかったです。わたしの後ろ(ブラジルのベンチ)にいるんですけど、ずっとわたしに「間違っている」「間違っている」「間違っている」と(笑)。ただ、後半はちょっとあきらめたみたいで、まったく静かになってしまったんです。前半あんなに言ってたのに、負けだしたら静かになってしまったんで。負けだしてからの方が指示が必要なんじゃないかなと思いました(笑)。

■西村「ブラジルの5番からユニホームはもらえないと思う」

――今回、入場の際に主審がボールを取って入っていたが、そのときの気持ちは?

西村 ボールが今回は置いてありまして、それを持ってピッチに入るよう指示を受けたんですけども、わたしも初めてなことで、自分で最初に持っていないので不安なんですよね。もしボールがなかったらどうしようと(笑)。実際には、マッチコーディネーターが「ここにボールはあるよ」という指示をしてくれるし、そこにあるボールだけに「Kick off」とプリントされています。われわれがボールをチェックするときに、20個のボール中にたった1つだけ「Kick off」とプリントされていて、それが置いてあります。そのまま持っていくんですけど、やっぱりボールを持って入らないと落ち着かないですね。自分の表情としては、あー良かったと思いながら入ってました。

相樂 わたしは(ボールに)キスしそうになりました(笑)。

――今回どのようにコンディションを整えたのか?

西村 昨年、コンフェデレーションズカップの前に同じ場所でレフェリーセミナーがあったので、そこに参加したときに唇が乾いてしょうがなかったという経験をしています。そのときに、レフェリー本部があるホテルが海抜1300メートルくらいの場所に位置していたので、トレーニングが非常につらかったのを覚えていました。今回大会直前に、わたしはまず高地対策を考えて、岐阜県飛騨高山市にあるナショナル・トレーニングセンターに1週間、直前合宿をはって1700メートルところにある陸上トラックを使って、持久力を重視したトレーニングをやってから南アフリカに入っています。

 実際、最初のケープタウン、それからポートエリザベスがゼロメートルなんですが、それ以外の2試合に関しては内陸で1700メートル前後のところがあったので、そこでも自分の中ではフィジカル的なところが不安なく試合に臨めたので、トレーニングの成果はあったのかなと思います。大会期間中のレフェリーのフィジカルコンディションに関しては、レフェリー・フィジカルインストラクターがいるので、その指示のもと、フィジカルコンディションを整えていく。それからメディカルスタッフのチームが組まれているので、適宜、練習後、もしくは試合後、自分の体のメンテナンスをするという形でフィジカルコンディションの調整をしていました。

相樂 わたしは高地トレーニングに一緒にいかなかったので、向こうに行ってからつらい思いをしました。ただ、大会1週間くらい前に入っているので、試合には間に合うようにトレーニングしました。でも行ってすぐはきつくて、走り出しは心拍数が上がるのでビックリしました。

――展示されているユニホームは選手からもらったいうが、そのときにエピソードがあれば教えてほしい(会見場にはフランス、オランダ、ブラジルのユニホームが展示。ブラジルのユニホームは5番フェリペ・メロ)

西村 ユニホームはチームのマネジャーさんが試合終了後に持ってきてくれたものです。わたしが選手に直接交渉してもらったわけではありません。(ブラジルの)5番のユニホームは間違いなく、もらえないと思います(笑)。たまたま今回、フランス、オランダ、ブラジルという3チームから担当したレフェリー全員に対してユニホームを用意してくれました。マッチボールに関しては、今回FIFAの方からレフェリーがいただきました。貴重なユニホームばかりで、フランスとオランダのユニホームはマッチデー用の対戦国が書いてある貴重なものをいただいて、そのときに各国のマネジャーさんたちがいい笑顔で「お疲れさん」という感じで、いいコミュニケーションの中でユニホームをいただきました。
■相樂「ジョンさんとわたしはハンドルの遊びが多い」

松崎康弘 審判委員長 Jリーグでは事前に審判を発表してはいけないんですけども、今回はクラブに許可をもらったんで、西村君は25日に等々力で川崎フロンターレ対京都サンガの試合を吹きます。相樂君も同じく25日にJ2の千葉ダービー、柏レイソル対ジェフ千葉をアントニーさんと組んでやります。ぜひ、見てあげてください。

――次回大会に向けた思いは?

西村 次回のW杯はブラジルということですが、その前に皆さんご存知のように、レフェリーは次の1試合をちゃんとコントロールできれば、また次の試合のアポイントをもらえるという単純なことをやっています。もしブラジルに行くのであれば、次の試合をしっかりゲームコントロールすること。これなくして、その道はつながらないということは自分でも自覚していますし、目の前のことに100パーセント集中していきたいな、全力を出していきたいなと思っています。
 もし、また道がブラジルにつながるようなことがあれば、今度はFIFAから信頼されるレフェリーという形で、その大会に向かうようにしなければとも思っています。今回われわれは初めてW杯に参加したので、その期間中に見たW杯を経験したレフェリーのすごさはまだわれわれにはなかったし、その部分はこれから4年間の中で磨きをかけていかなければいけないなと思っています。

相樂 (西村さんと)一緒なんですけど、目標はいい副審になることなので、いい副審になっていればきっとブラジルに呼ばれるだろうし、いい副審でなかったら呼ばれないだろうと思うので、いい副審になるために日々の努力、目の前の1試合を頑張っていこうと思います。

――今回の3人の審判チームはいい雰囲気に見えたが

相樂 ジョン(・ヘソン)さんはどちらかというと、わたしの方に近いというか、西村さんがかなりきちっとしている方なので、わたしとジョンさんはハンドルの遊びが多いですね。3人ともハンドルの遊びがないと、ちょっと曲げてスーッと行ってしまうので、わたしとジョンさんで遊びを持って、試合中も同じような感じだと思います。西村さんが見ていないようなところとか、細かくなりすぎないように。
 試合中のことをもう少し細かく言うと、西村さんが得意なのは、ポイントをグッと絞った(フェリペ・メロの)退場のようなシーンですね。ああいった、フォーカスを絞って見るのが得意なタイプなので、わたしとジョンさんはもう少しざっくりと見て、「そうはいってもファウルだろ」というときに、ファウルを取ると。ミクロとマクロの両方の目を持って、どちらがやってもファウルを見落とさないようにできているので、チームワークはオン・ザ・ピッチもオフ・ザ・ピッチもいいのかなという気がします。

――判定に機械を導入すべきとの声については?

西村 機械を導入するかどうかということに、わたしに個人的な意見はなくて、今あるもので自分たちのレフェリングをしなければいけない。将来的に機械が入るのであれば、それを使ってレフェリングをする。そう考えています。

相樂 今回、副審の方に注目が集まって、副審の方がエラーがはっきりしちゃうんですね、オフサイドだったり、ゴールイン・アウトと。わたしとしては、副審も難しいんだと注目されたことはいいことだったと思います。副審も本当に難しいんだなと。その上で今、西村さんが言ったように、機械を入れるかどうかはわたしたちが決めることではなくて、いろんな協議会で決めることであって、われわれは決まったのであれば、その方法の中で最善を尽くしていい判定をするだけなので。(機械を)入れた方がいいかどうかはお任せして、われわれは与えられた中で一番いいパフォーマンスを示すことだと思います。
■西村「決勝はハワード主審の一部として最大の努力をした」

――準々決勝でウルグアイのスアレスがハンドでゴールを防いだが、それについてはどう思うか?

西村 あれだけではないですよね。今大会ではもう何シーンかあったと思います。起きた時間帯によって扱われ方が違うんだなというのを感じました。試合終了間際に起きたということですよね。レフェリーとしては、起きたことに本当に正確に判定してあげること、それが両チーム、サポーターも含めて納得する結果になることが間違いないということを感じました。

――決勝は荒れた試合になったが、大きな試合のゲームをコントロールする難しさを感じたか?

西村 非常に難しい試合だったと思います。コントロールに関して言うと、それぞれのレフェリーがコントロールする方法を持っているので、ハワード主審はハワード主審の最善を尽くしてコントロールしていたと思うし、わたしもハワード主審の一部として最大の努力をしました。決勝に関して言えることはもうそれだけで、選手がどのような形で活躍するのをどういうふうに引き出せるかが、レフェリー側としては一番頑張っているところなので。ただ、ああいう本当に大きな試合での難しさを肌で感じました。

 難しさということで言えば、先ほどテクノロジーの話もありましたが、今大会のスーパースローのリプレーがわれわれにとっては、いろんな意味で難しくもなり、逆に正しい判定という形で皆さんに見ていただける機会にもなったと思っています。スーパースローのリプレーで見るから「レフェリーの判定が正しいじゃないか」、もしくは相樂であれば、ああいう形ではっきりとオフサイドラインが引かれることの方が、レフェリーの判断が正しいとなるケースが多い。もちろん間違いもはっきり出るんですが、おそらく見ていただいてお分かりのように、ほとんどの判定が合っているものが多かったと思います。そういう形で、カメラへの挑戦みたいな部分もありましたし、そういういろいろなものをひっくるめて決勝戦、チャンピオンになるんだという11人対11人の戦いをどうコントロールするかはただ事ではなくて、本当に簡単なことではない、というのが実際にわたしが第4の審判を務めて感じたことです。

相樂 第5の審判はベンチの横に座って見ているんですが、わたしはベンチをコントロールする権限がないので、何かあったときのために備えてよく見ていました。両チームのテンションがどんどん上がっていって、難しいゲームになったなというのが感想で、きっと誰がやっても大会で一番難しい試合になったと思います。

<了>

|

« プレシーズンマッチ2010 大分 1-2 アビスパ、いろんなコメント(20100703) | トップページ | 草津 2-1 アビスパ、20100717、いろんなコメント »

岡田武史(A代表)関連コメント」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 西村主審「決勝担当は日本サッカーの努力の結果」 2010年南アフリカ・W杯 審判員報告会:20100716:

« プレシーズンマッチ2010 大分 1-2 アビスパ、いろんなコメント(20100703) | トップページ | 草津 2-1 アビスパ、20100717、いろんなコメント »